伝わる「インタビュー記事」の書き方|事前準備から制作の流れまで
オリジナリティのある記事を求められることも多い昨今、紙媒体だけでなくWebサイトなどでもインタビュー記事を制作するケースが少なくありません。インタビュー記事は、リアルな生の声をもとに記事を書くことで、より内容の充実した記事を読者に届けることができます。
今回は、インタビュー記事の書き方についてまとめてみました。
インタビュー記事の種類
インタビュー記事は、特定の人などにお話を伺い、生の声・実体験をもとに執筆したものです。形式には以下の通り大きく3つあり、それぞれのシーンに応じて適した形式で執筆していきます。
・対談(Q&A)形式
インタビュアー(質問者・ライター)が質問し、インタビュイー(取材対象者)がそれに答えるという対談形式です。取材時の会話をもとに執筆していくので、その場の雰囲気やインタビュイーの人柄が伝わりやすく、また知りたい情報が分かりやすいメリットがあります。
・一人称(モノローグ)形式
インタビュイーが一人で話しているような形をモノローグ形式といいます。インタビュイーが読者に語りかけるように執筆できるため、人柄や思いを伝えやすいといえます。ただ、インタビュアーの思いなどをうまくのせられないため、用途に応じて使い分けるとよいでしょう。
・三人称(ルポ)形式
インタビュアーの第三者目線からの考察を入れたルポルタージュ形式です。インタビュイーの言葉だけでなく、その場の表情や雰囲気なども加味して論理的に記事化できるため、情報量が多く内容の充実した記事にまとめられます。
インタビュー記事の主な一例
インタビュー記事は多くのサイトやメディアで見かけます。ここで主な一例を見てみましょう。
・対談記事
著名人などの対談記事は、雑誌などでもよく見かけますよね。相手と知り合ったきっかけや共通の話題、昨今のニュースについての見解など、対談形式で話を深く掘り進めていきます。その人の考え方、視点に面白みを感じると、読者はどんどん読み進めたくなります。
・事例紹介(商品・サービス導入)
商品やサービスの利用者、利用企業担当者などにインタビューし、なぜその商品を購入するに至ったか、どんなメリット・強みがあるのかなどを深掘りしていきます。新たな導入先となる企業に向けて情報を提供する記事であり、販促が目的となります。
・社員インタビュー(採用関係)
採用応募者へ向けたコンテンツとして、社員インタビュー記事をホームページなどに掲載する企業が多く見られます。社員の学生時代や応募するきっかけとなったエピソード、入社後の仕事についてや現在の状況などを深掘りし、記事化します。
インタビュー記事制作の前にやっておきたい4つのポイント
インタビューでは、いきなりお話を伺うのではなく事前の準備が欠かせません。主にどのような事前準備が必要か、ぜひ押さえておきたいポイント4つを見ていきましょう。
1.記事制作の目的を考える
どんな文章にも言えることですが、「なぜその記事を書くのか」「誰のために、何を伝えたいのか」、書く際には「目的を考える」ことが重要です。それはもちろん、インタビュー記事であっても同じです。
記事の目的によってインタビュイーを選定する、もしくはインタビュイーが先に決まっていて、その人に合わせてターゲットを固めていくなど、順序が異なるケースもあります。企画の段階で考える場合もあるでしょうが、目的をしっかりと固めておくことが大切です。
2.取材対象者についてしっかりと下調べする
インタビューする相手に対し、目的に応じた質問をするにはリサーチが必須です。インタビュイーが取材された他社の掲載記事など、相手の経歴を含め出来得る限りの下調べをしましょう。対象者が社員などで個人の情報をうまく見つけられない場合、企業のホームページや公式SNSなどで企業の情報やサービス・商品をしっかりと確認しておくことも忘れずに。
3.大体の構成を考えておく
インタビューするにあたり、おおまかな構成を考えておきましょう。どんな見出し(トピック)をテーマに置くのか、どんな切り口でどれくらい深掘りしていくのか、質問項目を考える前段階として準備しておくと進めやすくなります。
4.質問内容を考えておく
インタビュイーへの質問項目は、インタビュー当日ではなく事前に考えておきます。心がけたいことは、事実よりも考え方や思いをお伺いすることです。事実はホームページなどですでに記載されていることも少なくありません。事前情報として頭に入れて置き「○○ということがありましたが、どのようにお考えですか」など、話の切り口に工夫しながら質問を考えるとよいでしょう。
記事制作の流れ
事前の準備でぜひ押さえておきたいポイントをご紹介しました。それらも含めて、インタビュー記事制作における全体の流れについて見ていきましょう。
・企画
「記事制作の目的を考える」でもお伝えしたように、誰にどんな情報を伝えたいのか、目的を考え企画を立てていきます。メディア全体での企画ももちろんですが、記事それぞれで想定読者なども異なってきます。まずは読者が誰かを意識して企画を立てることが重要です。
・インタビューの依頼
インタビュイーが決まったら、早めに依頼をします。その際に企画書など具体的な資料があれば、相手に依頼内容を伝えやすいでしょう。最初の依頼はメールなどが多いのではないでしょうか。相手に一度に多くの情報をお伝えすると驚かれることもありますので、概要などコンパクトにお伝えし、その後電話や詳細のメールなどで具体的なお話を進めることがおすすめです。
・事前準備
先述した「取材対象者についてしっかりと下調べする」「大体の構成を考えておく」を行いましょう。
・事前打ち合わせ・ヒアリング
可能であれば事前打ち合わせ・ヒアリングを行います。打ち合わせでは改めてインタビューの承諾をいただき、インタビューが公開の場合はその日時を決めます。その他、インタビュイーと調整が必要な項目(当日のスケジュール・集合時間・開催場所・告知用プロフィール・必要であれば告知用写真など)についてもすり合わせておくとよいでしょう。
・質問項目の作成、インタビュー対象者への共有
先述した「質問内容を考えておく」をもとに質問内容を箇条書きで構いませんので書き出します。これは「インタビューガイド」「インタビューシート」とも呼ばれるもので、当日のインタビュー進行の目安となるような存在です。
できあがったら、インタビュー対象者にもインタビュー前に共有しておきましょう。インタビュイーも安心して当日を迎えることができ、インタビューがスムーズに進みます。
・インタビュー
当日のインタビューでは、その場の流れも大切にしながらしっかりと話を伺います。質問項目だけにとらわれず、あくまでも一つの目安としつつ、仮説が外れた場合もうまく切り口を変えながらインタビューを楽しむつもりで進めていきましょう。
・文字起こし
インタビューの際に録音しておいたデータをもとに、文字起こしを行います。現在ではアプリなどを使ってある程度の精度の文字起こしが可能となっています。私の場合も、Nottaアプリで一度文字起こしを行ってから、全体を聞きなおして適宜補正して文字起こしを完結させています。
文字起こしには、録音されている言葉をそのまま文字に起こす「素起こし」、意味のない言葉を取り除いた「ケバ取り」、ケバ取りを読みやすく整えた「整文」があります。インタビュー記事の場合はケバ取りした文字起こしを使って記事化していくことが多いかと思います。文字起こしにはかなりの時間を要しますので、インタビュー後はなるべくはやく文字起こしに取りかかり、記事化できるよう進めていくとよいでしょう。
・構成を組み立てる
事前準備でおおまかな構成を考えておいたものを、実際に執筆するにあたり「本当にそれでいいか」考えて組み立てていきます。インタビューの内容によっては多少変わってくることもありますので、インタビューで得た情報をうまく記事化できるよう構成を固めましょう。
ただ、インタビューで話が脱線したなかに重要な要素が含まれることもありますが、目的から外れないよう、全体を調整することが大切です。
・執筆する
構成に沿って、文章を書き進めていきます。注意したいのは、文字起こし(話し言葉)そのままに書かないこと。文字起こしを声に出して読んでみると分かるように、日本語としてうまく意味が通じない箇所が散見されると思います。それをそのままにしてしまうと、意味が分かりにくいインタビュー記事ができあがってしまいます。
読みやすさを意識して、話の順番を工夫しながらストーリー性を持たせて書いていくことがポイントです。また、文字起こしの内容を全て記事化するとかなりの文字数になってしまうでしょう。「何を書かないか」をよく吟味し、伝えたいことが伝わるように文章化します。
・文章を整え校正する
文章は一度書ききったら終わり…ではなく、かならず一定時間寝かせて校正することがおすすめです。書いたときは「これでいい!これがいい!」と思っていても、時間を経て読み返してみると「おかしいな?」と思う箇所がどこかしらに出てくるからです。
私の場合は一晩寝かせます。一晩眠ると、自分の頭のなかがリセットされるので、読み返したときに「あれ?」と気づきやすいのです。誤字脱字はもちろんですが、正しい内容なのかファクトチェックなども忘れずに行いましょう。
・リード文、タイトルを固める
文章を校正する際に、リード文とタイトルもよく読み返します。私の場合は記事を書く最初の段階でにざっくりと書いておき、最終段階でよりベストな言葉に固めていきます。記事は、冒頭分と最後の文で決まるとも言われます。タイトルも、目的に即したものか、読者に「おっ」と思ってもらえる一文になっているか、今一度読み返してみましょう。
・インタビュー対象者に内容を確認してもらう
原稿ができたらそのまま印刷(入稿)、発行(公開)ではありません。編集部チェックなども経て、インタビューさせていただいた対象者に内容を確認してもらいます。読者にとってより良い記事なのはもちろんですが、インタビュイーの意図と食い違っていてはいけませんので、必ず確認していただき、ご了承を得るようにするとよいでしょう。
・編集部を経て入稿(印刷)、公開(発行)
インタビュイーからの了承を得たら、編集部でも最終確認を行い、入稿(印刷)、発行(公開)へと進みます。発行日(公開日)はインタビュイーにもお伝えし、より多くの方に読んでいただけるよう、情報拡散していただくとよいでしょう。
インタビューの際に押さえておきたい5つのこと
インタビューは一度きりであり、インタビュイーの大切な時間をいただいて実施されています。しっかりと必要な項目を聞き取り、さらに充実した記事にできるよう深掘りした質問ができればいいですよね。
ここで、よくありがちな失敗談をもとに、押さえておきたいことを5つにまとめました。
・話がなかなか盛り上がらなかった
話がうまく盛り上がらないと、どうしても焦ってしまいますよね。まずはアイスブレイクで話しやすい雰囲気作りを心掛けてみましょう。例えば天気の話、最近の話題のニュース、相手との共通の話題などで本題に入る前段階を作っておけるといいでしょう。
・録音が上手くできなかった
インタビューした内容は、メモだけで記録できるわけではありません。しっかりと録音できる機材を用意しておくことが不可欠です。ICレコーダーに加え、サブでスマホに録音アプリを取り込んでおいて用意しておくとよいでしょう。インタビューの現場で、どちらかが使えない、となった場合でも対処できます。
・メモすることばかりに集中してしまった
相手から話を伺うなかでやってしまいがちなのが、ついついメモすることばかりに集中してしまうこと。まずは相手の話を「聞く」ことを第一優先にして、メモは必要なポイントに絞りましょう。
・事実ばかりでうまく記事にまとまらなかった
相手から事実だけを聞いていると、記事にする際にうまくまとまらないことがあります。いいインタビュー記事によくあるのは、相手の人柄が上手く伝わる内容であること。話を聞く際には、事実だけを尋ねるのではなく、その際にどう思ったのかなど、思いや考え方などにも注目して聞いてみましょう。
・話が単調でうまく聞けなかった
質問が単調だと、事実だけ、その時点だけ、など記事に奥行きをうまく作れません。相手から話を聞く際には質問の切り口に注意し、話の幅を広げたり深掘りしたり、時間軸を変えてみるなど工夫を凝らしましょう。聞き方ひとつで、インタビュイーの答え方も大きく変わっています。
最後に
インタビュー記事は、読者に対し、インタビュイーの人柄や思いが伝わるよう文章にすることが大切です。ただ聞いただけを書き言葉に起こすのではなく、ストーリー性なども盛り込んだ読ませる記事が書けたらいいですよね。今回ご紹介したポイントを参考に、読者に思いが伝わるインタビュー記事を書いてみましょう。
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